中小企業の健康経営


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HOME | 中小企業の『健康経営』入門 | 1章2節:コンディション問題(プレゼンティズム)

中小企業ではコンディション問題が9割以上

中小企業にとっては、生産性の損失を引き起こしている「コンディション低下(=プレゼンティズム )」を解消することがウェルビーイング戦略(健康経営)の中心テーマです。

健康経営」という用語は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です(2005年出願)。 新しい考え方なので、聞き慣れない単語や独特のニュアンスが多いです。


本稿では、これらの基本用語を整理します。

 

プレゼンティズム問題
<目次>
1)健康経営が目指すのはウェルビーイング
     ・「全てが満たされている」のニュアンス
     ・満たされていない状態を解消したい
     ・問題意識を広く
2)コストで捉える不健康(=非ウェルビーイング)の構造
     ・3種類の不健康による経済損失
     ・経済損失の8割はプレゼンティズム

1)健康経営が目指すのは、ウェルビーイング

・ 「全てが満たされた」のニュアンス

世界保健機構(WHO)では、「健康」について次のように定義しています。
 

病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること
Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.

 

 
「すべてが満たされた状態」と訳されていますが、ぴったりの日本語がありません。そこで本稿では「ウェルビーイング」というカタカナ用語をそのまま使います。
 
社員の皆さんにはそういう状態になって欲しいのです。肉体的・精神的・社会的に「イキイキと働ける状態にある」社員は、その潜在力をフルに発揮して高いパフォーマンスを実現できると考えています。
 

・ 満たされていない状態を解消したい

したがって、肉体的であれ、精神的であれ、社会的であれ、「何かが満たされていない状態の社員」が存在することは、パフォーマンスの低下が発生していることとつながるので、会社にとって解決したい問題なのです。
 
そして「何かが満たされていない状態」の代表例が、肩こり・腰痛・栄養の偏り・睡眠不足・不安・孤独などのコンディション不調です。
 

・ 問題意識を広く 

健康経営という言葉の響きに引っ張られて、「不健康 = 病気」と問題を狭く誤解しがちです。中小企業の経営者の求められているのは、社員のパフォーマンス低下を引き起こしている要因を幅広くとらえる視点です。
 
「不健康 = ウェルビーイングでない状態」と捉えた発想に立つと、社員のパフォーマンスを改善する機会があちこちに存在することに気づけます。

2)コストで捉える不健康(=非ウェルビーイング)の構造

・ 3種類の不健康による経済損失

社員の不健康関連コストとは、社員が抱える不健康トラブルに関連して企業が負担している直接および間接の費用のことです。大枠としては、「医療コスト」「アブセンティーズム」「プレゼンティーズム」の3種類で捉えます(経済産業省・厚生労働省・大学、等)。
 
医療コストとは、自社が属する健康保険組合を通じて負担される加入者の医療費などです。自前の健保組合を抱える大企業であれば、医療費負担の上昇は経営課題として実感しやすいです。
 
しかし、多くの中小企業は協会けんぽを利用なので、自社だけが努力しても他社の状況で打ち消されてしまうので、「自分ごと」になりにくい・・とも言えます。
 
アブセンティーズムとは、病欠や病気休業している状態のことです。年間給与と休んだ日数をもとに金銭換算します。
 
有給休暇の範囲であれば人件費として流出するものです。不健康による欠勤も、その人件費の中に埋没してしまいます。それを改めてクローズアップするものです。
 
プレゼンティーズムとは、コンディション不調で仕事のパフォーマンスが低下している状態のことです。年間給与と低下率の推計をもとに金銭換算します。
 
期待どおりの成果であろうがなかろうが、人件費として流出しているものです。そこで、パフォーマンス低下分に相当する人件費を割合計算してクローズアップするものです。
 
そういう意味でアブセンティーズムと同様で、コスト計上された人件費の「内訳」となります。
 

・ 圧倒的に大きなプレゼンティーズム(コンディション不調)

 
直接的なコストである「協会けんぽへの保険料率」を自社努力で低下させることは不可能です。
 
なので、健康経営のアプローチで削減努力を向けられるのは間接的なコストである残りの2項目となります。そして、多くの研究や調査で、プレゼンティーズムが圧倒的に大きいということがわかっています。
 
つまり、中小企業として生産性をアップして企業パフォーマンスを向上するためには、プレゼンティーズムを発生させている「コンディション不調」を解消することが中心となります。
 
 

中小企業での労働生産性損失
(一人あたり)
    
労働生産性損失
 
 
(出典) 【経済産業省】横浜市のすすめる健康経営」を元にネクセント(株)作成

中小企業での健康経営の核は、プレゼンティーズム対策です。コンディション不調だった時と比較して、ウェルビーイングになることで追加で生み出される成果と利益・・これが本質的に狙いたいものです。「健康関連コストを削減しよう」という文脈で語られることも多いですが、キャッシュとして出ていく人件費は変わらないので注意が必要です。