中小企業の健康経営


お問い合わせ
HOME | 中小企業の『健康経営』入門 | 1章3節:プレゼンティズム解消には行動変容が不可欠

プレゼンティズム解消には行動変容が不可欠

仕事パフォーマンスの発揮を阻害する「プレゼンティズム」の解消には、社員一人ひとりの行動変容が不可欠です。これまでの生活様式の中に、コンディションを悪化させる要因が固定化しているからです。
 
本人もそれを自覚していることも多いです。しかし、行動変容の実現は容易ではありません。自分一人ではやり抜けないチャレンジに対して、会社でバックアップする取組は、大きなリターンが期待できます。

ウェルビーイング行動変容
<目次>
3)行動変容できない多数派に支援提供 
    ・ 理想イメージを膨らませる「おためし体験」
    ・ 第一歩を踏み出す「後押し」
    ・ 軌道修正を助ける「サポート役」

1)ライフタイルに起因する不調

肩こり(14%)・眠気(10%)・腰痛(8%)が、プレゼンティズムの具体症状のトップ3です(産業医科大学の研究による。カッコ内は生産性損失全体における割合)。4位以下には、眼精疲労・うつ・疲労感・不安・頭痛・・と続きます。
 
ライフスタイル全体に絡んだ問題です。職場生活に限定されるものではありません。コンディション不調を招いてしまう「良くない習慣」を続けていることに起因しています。
 
「運動不足の上に、長時間のデスクワーク」「睡眠時間の短さや質の悪さ」「食事の栄養バランスやタイミングの悪さや偏り」などの積み重ねが悪影響しています。

2)「頑張って、挽回!」が、更なる悪化を引き起こす

コンディション不調は、熱が出た・吐きそうと言った「いかにも病気!」の類とは様子が違います。「少し我慢して頑張れば何とかなる!!」的な発想に本人自身もなりがちです。
 
また、その不調は、見た目では判別できないものが多いので、周囲の人は気付かないことが殆どです。その結果、ベストコンディションの時と同様に仕事を任せ、しっかりと仕上げてくれることを相手に期待します。
 
そのような状況で、本人は、本当に真面目に頑張ります。しかし実際には、ベストなコンディションからは程遠いので、集中力が低下する/アイディア創出が鈍る/適切な決断を下せない等のパフォーマンス低下は避けられません。
 
しかも、いつもと同じ量の業務をこなすのに余計な時間がかかったり、ミスを起こしてしまうかもしれません。生産性の低下を「労働時間の増加」で賄おうとしたりして、疲労を余計に重ねる悪循環を引き起こしてします。
 
その結果、さらにコンディションが低下して、大きな生産性ロスを産んでしまうのです。

3)行動変容できない多数派に支援提供

プレゼンティズムを抱える人にヒアリングをすると、多くの人が「ライフスタイルがイマイチ」と自覚しています。本人は「わかっている」のです。
 
でも、変われない・・のが普通の人です。理想に向かって自分を完璧に律することができるのは、ごく一部の意識の高い人に限られます。
 
多数派の普通の人が行動変容を実現できない背景には、①(自分にとっての)理想像をイメージできない、②第一歩を踏み出せない、③途中でくじけるの3つの要素が絡み合っています。
 
「コンディションって、個人の問題だから自分で何とかしてよ」。こういうスタンスに立脚する会社を否定することはできません。しかし、コンディション問題を抱えたままの社員がいて、年間で一人当たり73万円の人件コストを無駄にしているのが現実です。
 
コンディション改善に投資を行い、現在は成果につながらず無駄になっている「73万円分の人件コスト」を有効に活用して、利益を生み出す・・。このような改革活動のメリットをしたたかに計算できる経営者も多数いるのです。
 

・ 理想イメージを膨らませる「おためし体験」

どのようなライフスタイルが、自分にとってベストなのか・・?
 
この具体的なイメージを把握することが、行動変容の出発点です。「自分にとって」のニュアンスがポイントで、体質や好みなどは人によって違うので、理想とするライフスタイルも十人十色になります。
 
正解が存在しない世界なので、自分なりの理想像を自分で描くことが不可欠です。そのための「題材」を、会社として提供するのが有効です。
 
情報提供やイベント参加などを通じて、様々なバリエーションのライフスタイル理想像を一人一人がお試しで検討(考察や実体験)できる機会を設ける、等です。
 

・ 第一歩を踏みだす「後押し」

本当にそれで、うまく行くのか・・?
 
「やってみなければ、分からない」と理解していても、未経験の事柄への挑戦に躊躇するのは普通です。勇気を持って踏み出すための障害も人それぞれに異なります。
 
物理的・心理的など様々な障害への対処を具体化して、自分なりの行動計画を自分で組み立てる必要があります。そのための「検討の進め方・枠組み」を、会社として提供するのが有効です。
 
行動変容のプランを組み立てるための手法を紹介したり、各人が具体的に検討を進める際の助言をサポートしたりする、などです。
 
 

・ 軌道修正を助ける「サポート役」

結果を出せない自分は、ダメなのではないか・・・?
 
「最初から上手く行くなんて、ありえない」と理解していても、思い描いた世界にたどり着けなかったり、高すぎるハードルに挫折してしまうことは普通です。そして、行動変容がうまくいかなストレスへの対処の仕方には、人それぞれに特徴が異なります。
 
共通に大切なのは、失敗で得た教訓を「次のサイクル」に生かすことです。そもそも描いた理想像が勘違いだったのではないか・・。あるいは、第一歩の選択が悪かったのではないか・・。または、やり方にまずかったところがあるのではないか・・・、などなど。
 
実地から得られた経験やデータを活用し、自問自答を通じて、次なるステップへのアイディアと行動プランを構築する。このサイクルを回すテンポを速めるための「サポート役」を、会社として提供するも有効です。
 
定期的にコーチングしたり、ヘルプデスク的に支援したり、などです。


パフォーマンス低下を引き起こしているコンディション不調を解消するために、社員の行動変容を「会社として」支援提供する・・。
 
社員の個人問題として放置するのではなく、会社としての「投資」とそこからの「効果(リターン)」を冷静に見極め。職場以外の、生活シーンやサードプレイスなども含めたライフスタイル全体を視野に入れる発想がこれからの経営視点でもあります。