中小企業の健康経営


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HOME | 中小企業の『健康経営』入門 | 2章3節:「行動変容の支援」という人材投資のカタチ

「行動変容への支援」は最強の人材投資

持てる実力をフルに発揮できるコンディションを整える・・。そのためには、社員一人ひとりが長年の習慣を変えたり、新しい行動を始める必要があります。しかし、「行動変容の必要性を切実なものと感じていない」のが多数派です。
 
このような「ふつうのヒト」の行動変容を、会社で全面支援することが、結果として組織全体のパフォーマンスを高めることにつながります。

 
健康経営の組織開発
 
<目次>
1)仕事パフォーマンスを高める生活習慣づくり
    ・ 経営課題は社員のコンディション
    ・ ライフスタイルも視野にいれる経営施策
2)ライフスタイルの変容という経営チャレンジ
    ・ 途中挫折しがちな「フツー」の私たち
    ・ 必要なのは「意欲/知識/技術」の3点セット
3)個人の行動変容を会社が支える
    ・ 社内向けプロモーション活動を活発に
    ・ 行動変容の推進を投資案件と考える
4)行動変容ステージを施策の基盤にする
    ・ 変容推進の方法論を確立
    ・ 行動変容のモニタリング軸とする

1)仕事パフォーマンスを高める生活習慣づくり

・経営課題は社員のコンディション

「社員が自分のチカラの100%を発揮するために、会社としてはどのような手を打つべきか?」。これは、ウェルビーイング戦略/健康経営を志向する会社が持ち続ける問題意識です。
 
専門的な表現をすると、「プレゼンティズム問題(注)の対策」です。人材マネジメントとして無視できない経営課題であり、解消に向けた施策が急がれます。
(注)コンディション不調に伴う仕事パフォーマンスの低下
 
設備投資やIT投資と同様に、社員のコンディション改善を対象とした「人材投資」と考える経営者が増えています。会社全体のパフォーマンス向上に影響する着眼点として、自問自答が求められます。
 
 

・ライフスタイルも視野に入れる経営施策

働く人々のコンディション改善の基本は、「適度な運動習慣」「バランスの良い栄養取得」「質の高い睡眠」の三つです。仕事への取り組み方そのものというよりは、ライフスタイル/生活習慣と結びつきが強いものです。
 
そして、これらは長期間の積み重ねで結果につながる・・が特徴です。困った時の「急場しのぎ」では、対応できません。
 
もし、コンディション不調の社員が多いならば、その対策を個人任せにして安心できる経営トップは少ないはずです。経営としてのビジョンと戦略で取り組むべき人材マネジメントのテーマです。
 
しかも、業務時間外も含むライフスタイル全体が問われます(むしろ、業務時間外の方が長い!)。会社による「人材投資」のサポート範囲も広い視野が求められます。
 

2)ライフスタイルの変容という経営チャレンジ

・途中挫折しがちな「フツー」の私たち

長年で身についたライフスタイルの行動パターンを変容には、自己コントロールのチカラが求められます。個人の努力だけで行動変容を確実にするのは、非常に困難です。やり始めたとしても、最後までやり抜ける人は少数派です。
 
例えば、テレワークが増えて外出する機会が減った中で、「食事は腹八分目に抑えながら、通勤時と同じだけの歩数を確保する」という単純な行動ですら、しっかりと継続できる人は必ずしも多くありません。
 
会社の中の多数派の行動変容を実現するのには、非常に高いハードルが存在します。そもそも「変えなければならない」という認識にすら、たどり着けない可能性があります。
 
 

・必要なのは「意欲/知識/技術」の3点セット

新しい生活習慣/行動パターンへのシフトには、各人が意欲・知識・技術の三要素を揃えることが不可欠です。
 
「コンディションを整えるために、自分の行動を変えよう」という意欲、「やるべきことについての考え方やアプローチ法」という知識、「必要な行動を起こし、それを持続できる」という技術の三つです。これらを、「自分流」に組み合わせ、具体的な結果につなげなくてはなりません。
 
意欲は、その気持ちが長く続く(ますます高まる)ことが大切。大きな夢や希望を持つと同時に、実践可能な短期的な行動目標へと展開されることがポイントです。
 
知識は、「絶対唯一の正解」が存在しない・・という前提に立つことが大切。様々な考え方や切り口を知り、自分なりに選択していくことがポイントです。
 
技術は、実践を通じての「経験値」を積み重ねることが大切。「お試しの一歩(スモールステップ)」を早く踏み出し、結果に従ってテンポよく軌道修正していくことがポイントです。

3)個人の行動変容を会社が支える

・社内むけプロモーション活動を活発に

社員の問題意識を高める「社内の世論形成」に会社として取り組まなくてはなりません。「強制」では反発を生むだけなので、社員の気持ちや考え方をうまく誘導する「演出」を加えます。
 
すでに関心の高い「積極派」もいるでしょう。また、何が何んでも興味を示さない「拒絶派」もいます。しかし、最大派閥(?)は無党派/グレーゾーン層です。
 
この層の特徴は、「問題意識が生じる遥か以前の段階にいる」こと。関心の対象として、そのようなテーマが存在する・・という認識すらしていないステージなのです。
 
「コンディション改善によるパフォーマンス向上」という考え方を知ってもらい、興味を持ってもらい、お試しにトライしてもらい・・・と進んでもらえるように「社内に売り込む」というスタンスで会社は取り組まなくてはなりません。
 
人材マネジメントの領域ではありながら、マーケティングやプロモーションの発想が色濃くなります。
 
 

・行動変容の推進を投資案件と考える

関心すら持っていない多数派にプロモーションをかけ、実際の行動変容を実現するまでには、会社としてはそれなりのコスト(お金のみならず、時間や気遣いなども)を投入することになります。
 
そして、コンディション低下による無駄になる時間(=年間労働時間の15%相当)を実際の仕事に振り向けることができたら、そこからの利益(リターン)は膨大です。
 
さらには、会社のカルチャーが良くなって創造性が高まったり、社員のエンゲージメント向上による離職率や採用コストの低下などの波及効果もあります。
 
これらを総合的に勘案すると、設備投資・IT投資に匹敵する「投資案件」として検討する価値は大きいです。生産性や創造力を高めるための人材投資としてのコンディショニン工場は、経営課題の一つなのです。

4)行動変容ステージを施策の基盤にする

・変容推進の方法論を確立

「行動変容ステージモデル」という考え方があります。新しい生活習慣を立ち上げて行く過程を五つのステージに分けたものです。各人の状況に合わせた支援アプローチを考えるときのフレームワークです。
 

<行動変容ステージモデル>
行動変容ステージモデル

 
「パフォーマンス発揮に向けたコンディショニング 」という行動様式の考え方(ウェルビーイング戦略とか健康経営)については、多くの人が認知ステージの初期段階にいると言えます。
 
その段階では、「自分ゴトとしてしっかりと検討したい」という一定数以上の社員が生まれるように、認知を広める社内PRやキャンペーンが活動の主体となります。
「検討ステージ」の人が多くなってくれば、さらに、準備始動定着という段階へとコマが進めるように施策のシナリオを策定します。
 

・行動変容のモニタリング軸とする

変容ステージの代表的な活用方法は、「組織全体として、社員はどのような分布となっているか?」と「その社員は、どのステージにいるか?」の二つの判断軸です。
 
この判断軸で行動変容の状況が可視化(モニタリング)され、ウェルビーイング戦略の構想の基礎情報となります。認知ステージの初期段階に多くの社員が分布する現状から、中長期的にはどのような状態にシフトしていきたいか・・のビジョンを描くことが出発点です。
 
そして認知を拡大し、検討する人を増やし、行動変容への準備を進め、新しい生活習慣のチャレンジ始動の背中を押し、自然な日常行動として定着するように支援する・・。このシナリオを実際に動かす半年~1年の行動計画を具体化します。


個人任せにするのではなく、会社による「人材投資」として支援提供・・。社員の行動変容の実現度合は向上します。この施策が、社員のコンディションを向上し、社員のエンゲージメントを高め、一人一人の仕事パフォーマンスが発揮され、会社の業績へとつながる。
 
この流れには絶対的な「成功の方程式」は存在しません。施策の組み合わせと効果発揮のルートを「ビジネスケース」として仮説的に目論み、実践での結果を踏まえて軌道修正を重ねることで、ビジョンの実現に近づいていく・・このような社内ブランデイング/組織開発的な変革マネジメントとして取り組むのがウェルビーイング戦略(健康経営)です。